2017 SAROMA 完走記 Amatatsu編

 

 

間に合いますか?

大丈夫、間に合うよ

 

制限時間13時間ではない

彼女が掲げた目標はその10分前

 

これは99.9km  制限時間12時間50分の

サロマを走りきったナオコちゃんへの感想記

 

 

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【遅い立ち上がり ~42.195km

 

ボクは42.195km5時間ピッタリで通過した

 

今年は最後尾からという走りはしてない

にしても去年よりも遅い

過去ワーストだ

 

サロマの暗黙の完走ライン

それはフル5時間、ワッカ10時間

 

そう言えば、毎回完走ギリギリランナーの鈴木健司さんにさえ追いついていない

 

そこまで遅いペースなのに取り残される事なく前後周囲に仲間が走っている

 

サロプロも例外ではなかった

 

「みんな遅すぎだってば!」

 

雨と寒さの影響で全体的にペースが遅すぎる

 

この団子状態の展開があとから悪影響を及ぼす事になる

 

 

 

【ナオコちゃん発見 48km

 

サロプロのみんなから坂道突入のLINEが入る

少し遅れてナオコちゃんから

 

「足の根っこがずっと痛い」

「歩いてる」と

 

応援ナビで確認したら1km程前にいる

     

全速力で追いついたのは48km地点

 

 

「ロキソニン飲んだ方がいいですか?」

 

ダメ! まだ早い それはここ1番の時に

 

「さぁ 登りは全部歩くよ!」

 

心配性かつ頑張り屋なナオコちゃんの性格は一緒に練習してきたから分かってた

 

放っておいたら痛くても、坂でも無理して走りだしかねない

 

ここから54km大エイドまでは一緒に行こう

 

後ろのホッシー、エリちゃん、ミキティも気になるからこの位置は丁度いい

 

 

 

【遅すぎる! 54km大エイド】

 

大エイドに到着するとみんないた、、、

 

遅すぎる!!!

 

この時間、ここで会ったらダメだろ!

いったいどうなってるんだ今年のサロマは

 

雨でグチャグチャだったシューズを交換してエイドを出る時にまたナオコちゃんと一緒になった。

 

この時点では最後まで一緒に走るとは思ってなかった

 

 

 

【そろそろ時間が】

 

エイド後の登りも一緒に歩いた

足が痛そうだけど心折れてないし元気だ

 

ロキソニン、、、

 

まだダメ!

当たり前だ!

歩いてる登りで効いても意味がない

 

飲まないのが1番いいが、

それでもそろそろ、、、

それは痛みがというよりも

 

時間が、、、ヤバイ

 

 

 

【去年より5分遅い 58km

 

少し前にミキティからリタイヤのLINEが入った

 

そしてここでホッシー、エリちゃんが共にリタイヤとなった事を聞かされた

 

こちらも状況は良くはない

 

去年、ここ58kmからみぃーちゃんと一緒に走ったが、制限時間5分前にゴールした彼女の記録より5分遅かったのだ

 

バディだったとは言え、結果的に90kmまでビルドアップしたみぃーちゃんの走りは、あれは奇跡だ。 

 

あれをさらに5分短縮させんのか

 

岡ちゃんと東京の(もう1人の)ミキティが追いついた

 

「気合いを入れなおそう」

GOサロプロGO!

     

 

【時間の迷子】

 

60km関門 キロ7分を大きく超えていた

 

12:26到着

 

岡ちゃんたちが前に出た事でボクらがサロプロの最後尾だという事、去年のみぃーちゃんより5分も遅いという事、そして何よりも厳しいのは制限時間の22分前だという事

 

今の状況を伝えるとナオコちゃんの顔つきが変わった

 

初ウルトラの人がまだ60kmだというのに今が制限時間の22分前と聞けば慌てるだろう

 

いやこっちだって正直焦ってる

 

地図のどこを走ってるかは分かっているが、時間軸のどこにいるか認識していない

 

制限時間がここまで迫っている事に気がついていなかったようだ

 

これが時間の迷子というやつ

 

 

 

【作戦を練り直す】

 

足も痛そうだし間違いなくみぃーちゃんのようにはいかない。元々ペースに波あるし。

 

さてどうしようか

作戦を、この先をイメージしてみる

 

イーブンが無理なら、どこかの区間で稼がなきゃ

 

前半は農道だったり、路肩と言っても広かったからいいけど、この先は細い歩道が多いし、その歩道がおそらく水溜りだらけだからペース上げれないな、ツルガの手前は広い歩道だけどあそこは誰でもキツイ場所、ワッカの往路は向かい風か、、、

 

ここしかないね

 

魔女の森

     

「ナオコちゃん 今ロキソニン飲んで」

 

 

 

【いよいよ魔女の森へ 63km

 

ペースはガタ落ち

かなり痛そうだ

それに加えて時間が無いという焦り

 

魔女の森まで半泣きで、薬が効くの待ちながら走る我慢の道のり

 

ようやく見えてきた魔女の森

 

空いてて綺麗なトイレがあった

 

「今のうちに行っておいたら」

「行かない!」

 

普通ならトイレにいきたくなくても、足を止めれる理由があればそれに甘えてしまうものだ

 

どんだけの根性やねん!

 

でもたしかにここで挽回しないとこの先は厳しい

     

計算では@6:30/kmを切り続けて初めて挽回となる

もちろん歩きやトイレも含めてだ

     

 

【勝負の魔女の森】

 

予想どおり風もなく、水溜りもない走りやすい広い道

 

手前のエイドに寄るとナオコちゃんがいなくなった

もう走り出してるよ!

焦りすぎだってば

 

ナオコちゃんのペースが上がる

 

「速すぎ!!!」

 

いくらなんでもその速さだと潰れるよ

とにかく焦っている様子、息が乱れる

 

こ、今度は遅すぎ キロ7だよ

 

人には気持ち良く走れるペースというのがあるが、

ナオコちゃんは@6:30/kmがどうにも長く続かない

 

「アマタツさん!前 走って下さい!

   お尻見ながら走る!」

 

引っ張るのは嫌なので基本的には斜め後方を走るスタイルなのだが、、、

     

ここは北の大地北海道、42歳の男が苦しそうな表情の女の子に至近距離でケツを見られながら走ってます(笑)

 

 

 

【バディに】

 

代謝の上がっているランの状況下では痛み止めなんて10分~20分で効くはずなんだが

 

痛そうだ、本当にキツそうだ

 

もしかしたらボクは80km90kmまで行けるはずのランナーを70kmで潰してしまうのでは

 

それでもこの先の細い歩道のコースを水溜りを飛び越えながら落ちてくるランナーをジグザグに抜きながらペースを上げる

 

それに比べれば、、、、

 

でもやっぱり痛そうだ

 

決めた!

サポートはやめた

バディになろうじゃないか

 

運命共同隊だ!

もしリタイヤすることがあれば最後まで付き合おう 

 

この魔女の森で腹をくくった

 

 

 

【ここにも時間の迷子が】

 

ようやく魔女の森を抜けようとした頃

目の前にゲキ落ちのMariya発見

次の関門で痛み止めを飲むという

 

「次行けてもその次間に合わないぞ!」

「関門時間わかってんのか?」

「そんな余裕ないぞ、飲むなら今飲め!」

 

ここにも時間の迷子がいた。

 

無理も無い

周りに人がい過ぎるのだ

 

普通ならもっと人が少なくなってきて、そこで初めて自分がヤバイ位置にいると気がつく

 

今年のサロマは完走率が悪くて、後ろが団子状態だからタイムテーブルをちゃんと見てないとそれに気がつかない

 

 

 

【笑顔が戻った】

 

魔女の森を抜けた

私設エイドもあるがパスするナオコちゃん

 

でもメチャ痛そうだ 薬効いてないのか?

すごい根性だ

 

斎藤商店でやっと足をとめる

 

そして69km関門を越え70km到着

 

制限時間22分前が24分になった

 

たった2分でもここは落とさなかった事がすごい

大金星だ! 完走に近づいた! よくがんばった!

 

笑顔が戻った

 

 

 

【ツルガに到着 75km

 

70kmを越え、また元のペースに

 

笑顔が戻ったと同時に走りも、、、

 

あ、あの、、、

今頃、薬効いてきたの???

 

どんだけ鈍感な体やねん 

 

あれから1時間以上たってんだぞ(笑)

 

いや好都合か?

70kmからワッカまでの10kmは誰もがキツイ区間

ここで効いてるならそれはそれでいいが

 

痛いままペース上げて魔女の森超えたのか、、、

 

すごいな

 

これでこの先は楽になる、、、、はず

 

 

そしてツルガに到着

 

 

 

【ついに約束の地ワッカ 80km

 

予想どおり細い歩道区間は水溜りだらけ

車道に出ないとダメな箇所さえある

 

ずっと痛かった足裏が気になりだし、走ったり歩いたり

 

そうしているうちに岡ちゃん、ミキティが追いついてきた。Yamamoも一緒にきた

 

5人がほぼ同時についにワッカに到着

 

みんなの憧れのワッカ

 

ついにたどり着いた

 

5分切り崩し、制限時間の19分前だった

 

この先の10km5分、ラスト10kmで同じく5分使う

これで9分前ゴール

 

最後のビクトリーロードの余裕を考慮しても5分前ゴールが出来る

 

が、ナオコちゃんの制限時間は関門18時の10分前

 

 

それは、、、、

 

 

 

【ナオコちゃんが描いた絵】

 

大会直前にサロプロのみんなからDNSのナオさんに何かしてあげたいと

 

ほんとに直前だったけど急遽、色違いのTシャツを作って、繋がるきっかけを作ってくれたナオさんへのありがとうのコメントを寄せ書きした

 

この寄せ書きThankyouTシャツはボクのバックパックに忍ばせていて、サロプロの最後のランナーと共にナオさんに渡す

 

これがサロプロみんなで決めたサプライズ

 

ホツが先頭を頑張って走ったのは先にゴールして、ナオさんをゴール100m前で応援させるセッティングをする為

 

初サロマで完走出来るか分からないのにホツは頑張ってそれを成し遂げてくれた

 

うまい所で渡せるか分からないし、制限時間が無い中であわてて渡したくなかった

 

なのでサロプロ最後尾となり、ボクと共にその役割となったナオコちゃんが設定した自分ルールは制限時間の10分前

 

つまりサロマ99.9km12時間50分までに

 

それがナオコちゃんが描いた絵

 

 

痛くても足が前に進む理由がこれだった

 

 

 

【みんなとのハイタッチへ】

 

ワッカ突入の前に少しだけ休みを入れた

入り口の坂はさすがに走れない

 

80kmを超えた時間は15:12

 

岡ちゃんたち3人をパスし前に出るナオコちゃん

 

木々を抜け、目の前が開けた

 

ワッカだ! 

 

みんなと最高のハイタッチをすると決めていたワッカだ

 

先頭のホツはまだ来てない

 

つまりこの先でみんなとハイタッチできる!

 

みんなと会えてパワーもらって

ワッカでは自然とペースが上がる

 

 

の、はずだった、、、

 

 

 

【足裏の痛み再発】

 

ナオコちゃんの足裏の痛みが再発した

 

ペースなんてもんじゃないゲキ落ちだ

 

走りと歩きを繰り返すが、その間隔がどんどん短くなっていく

 

1km走れず、500mごとが300mに、そして100mごとに走りが止まるようになった

 

みんなとのハイタッチだけは元気に

ナオコちゃんらしい

 

でも足裏は悲鳴をあげていた

 

 

なんと岡ちゃんまでもがここでゲキ落ちに

追いついて来ないからミキティもYamamoも同じだったみたい

 

ナオコちゃんの落ちっぷりは深刻だ

それでも心は折れてない

 

絶対にナオさんに会いに行く

それしか頭にない

 

自分のために走り出し、誰かのためにゴールする

 

 

まさにこれだ

 

 

 

【走る歩く走る歩く 85km

 

やっと85kmのエイドが見えた

見えてるのにそこまで走り続けられない

 

「大丈夫、動き続けてれば痛み消えるから!」

 

ごめんナオコちゃんあれは嘘だ

 

膝や足首、太ももは動き続けることで痛みが消えることがあるけど、ボクの経験上、アキレス腱、腸脛靭帯、そしてこの足裏は休まないと引かない

 

走る、歩く、走る、歩く、走る、歩く

 

その間隔が短くなるのに合わせて、ボクが時計を見る間隔も短くなる

 

やばいなぁ、、、ここまできて

 

85kmエイド到着

たまらず椅子に座らせる

 

後ろから岡ちゃんたち3人が追いついてきた

 

自分が取り残されるという状況が焦りを誘ってしまう

 

 

だから ここは行くしかない

 

 

     

【次の関門はギリギリじゃダメだ】

 

86kmまで進むがペース変わらず

 

そして口数も止まった

 

 

ガンバレとかそう言った根性論ではない

 

止まる足を動かす方法

それは現実を把握させる事

 

痛いから走れないではなく

時間がないから走らなきゃ

 

厳しくともこの状況を知れば足が動くはずだ

 

 

 

次の関門は91.5km 制限時間は16:54

 

この6km50分かかって今16:00

この先の約6kmで同じく50分かかったら

 

次の関門は制限時間4分前に到着

 

そうなればナオさんにTシャツをなんて言ってられなくなる

 

「次の関門はギリギリじゃダメだ」

 

またナオコちゃんの顔つきが変わって、、、

 

足が動き出した

 

 

 

【また走り出す ワッカ折り返し】

 

岡ちゃんたちに時間のヤバさを伝えて、ナオコちゃんとボクが再度前に出る

 

一瞬、みんなまとめて、、、

そう思ったが遅い人に合わせるまでの余裕はなかった

 

このままだと共倒れになる

実際ここにいる5人は全員は完走できなかった

 

 

ナオコちゃんがまた走り出す

 

「アマタツさん前 走って!

   またお尻見ながら走るから!」

 

「ナオさんに会いにいく!」

 

やっぱり根性ある

 

ここからは時計に集中し過ぎて、ボクの方もあまり記憶がない 

 

走る、歩くを繰り返して、、、

 

気がつけばワッカ最先端のあの橋を折り返していた

 

 

 

【間に合いますか 91.5km関門】

 

よっしゃーーー 獲ったどぉーー

91.5km関門は制限時間の12分前

 

「間に合いますか?」

 

もちろんナオコちゃんの言う時間とは制限時間10分前のナオさんのいる場所まで

 

 

「間に合うよ さぁ帰ろう!」

 

 

そこからまた走り歩きを繰り返す

 

あの看板まで、あの坂まで、小刻みに走りと歩きを繰り返す

 

ナオさんの待つゴールを想像するだけで足が前に進む

 

この12分は大きい

 

魔女の森で頑張ったから稼げた10

ツラくとも座りこまなかったから稼げた10

 

「間に合いますか」

 

なんども聞いてくるナオコちゃん

 

そして最後にそれを聞かれたのはラスト1kmの看板

 

「間に合いますか」

     

「大丈夫、間に合うよ」

 

安堵したのか涙がこぼれる

 

 

【ゴール=ナオさん】

 

あと数百メートル

ボクらのゴール99.9km地点のナオさんが見えてきた

 

ナオコちゃんとお互いの健闘をたたえ合う

 

2人でのゴールはあの99.9km地点

よく頑張ったね

 

迎えに来てくれたRino

「最後100mだけサロプロのTシャツ着ていいか」

 

最後はこれで行こう

 

ついに、、、

たどり着いた ボクらのゴール=ナオさん

 

 

時間はちょうど12時間50分だった

 

 

 

Thank you Tシャツ】

 

これはボクの発案ではなくサロプロみんなの発案だという事

これはアマタツプロではなく、サロプロプレゼンツだという事

サロプロは完走よりも感動を求めるチームだという事

 

 

説明するはずが感無量で全く言葉がでない

 

「はい これ」

 

バックパックから取り出したナオさんへのThankyou

Tシャツを渡す

 

説明はいらなかった

みんなからの寄せ書きで全て伝わった

 

みんなのラストのイメージが現実となった

 

これを楽しみに走ってきたんだ

 

 

 

【カナラズゴールニツレテイク】

 

ナオさんにTシャツを着せて、、、

さぁ ここからはボクの番だ

 

一緒にゴールゲートをくぐろう

 

「カナラズゴールニツレテイク」

 

半年前、サロマを決めたあの日に約束したんだ

 

形は違えど今年の最高の形はこれなんだ

 

 

ナオコちゃんとナオさんと3人で手をつないでゴールまでのビクトリーロード

  

 

 

制限時間7分前

 

ボクらは想像するだけで涙がこぼれたシーンの中にいた

 

ずっとずっとこれを目指して走ってきた

 

完走と同じくらいに欲しかったこの100m

 

 

そうして、、、 

 

 

ついにゴール

 

 

ホツとシバユカがナオさんのためにゴールの向こう側にもう一つのサロプロゴールテープを用意してくれていた

 

これがサロプロのゴール

 

ナオコちゃんが根性で作った10分がもたらしたドラマ

 

やっぱりサロマはドラマだな

 

自分のために走り出し、誰かのためにゴールする

 

・・・

 

長かった半年

 

あのとき描いた最高の未来が「今」

 

一生忘れられない最高のゴールだ

 

ありがとう

 

     

サロプロ@アマタツ