2017 萩往還250km 完踏記 Amatatsu編

萩往還Trailer(2分)

 

 

 

「行けるところまで行こう」

 

ボクは大嫌いな言葉を思わず口にした

だいたいこれを言う時点でゴールを見失ってる

行けるところまでって何だそりゃ  アホか!

 

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【スタート3時間前の発熱】

 

44k西寺エイドで薬が切れた

スタート3時間前の競技説明会でまさかの発熱

調子よくここまで薬が効いてたから風邪が治ったつもりで走ってたのに、、、

 

250kもあんのにまさかこんな序盤でメチャ具合悪いよ

 

せっかくこの日までたくさん練習してきたのにあまりの不甲斐なさに泣けてきた

 

未知の距離への挑戦のはずが、いかに風邪に耐えれるか選手権になってるよ

 

薬を飲み続けてなんとか最初の夜はやり過ごそう、、、

 

ちきしょー、こんなはずじゃなかった

 

 

 

【ポジティブに考えよう】

 

それでも60k70kと距離を重ねる

熱が上がれば解熱剤、汗をかいては寒気の繰り返し

 

夜が明けて87k旧油谷中学校エイド

サプライズ応援に来てくれた徹さんの並走がありがたい

 

普通なら薬なんて1,2錠しか持たないだろう

幸か不幸かスタート前の発熱のおかげで解熱剤は急遽バックパックに1箱も詰め込んだ

連発で飲んでるけど でもこのおかげで走れているならラッキーな事だ

 

ポジティブに考えよう!

 

そうやってついに100kに到達

解熱剤4発で熱はやっと治まったっぽい

なんとか最悪の夜を誤魔化しながらやり過ごせた

 

ここまで具合の悪さと熱ばかり気にしていたせいで気付かなかったけど、一番大事な足はノーダメージ

もしかしたら発熱のおかげで抑えた走りが出来ていたのかも

 

とにかくポジティブに考えよう!

 

 

 

【風邪から復活 そして時間との戦いへ】

 

気のせいではなかった

そこからやっと貯金が出来る走りとなった

 

108k川尻岬を越え、118k立石観音を難なく超えた

 

調子がいい!

 

125k千畳敷の激坂も超えることが出来た

リタイヤ続出の原因にもなった昼間の暑さもあの風邪の寒気に比べたらカワイイもんだ

 

131k日置ではさすがに足が止まってエイドで20分寝た

誰だ体が興奮してると寝れないとか言ったのは!

おやすみ3秒だったよ(笑)

 

 

しかし貯金は無くなり ここでまたデッドラインを越えてしまった

 

 

デッドライン

過去のデータからこの時間を超えてしまうと完踏率が半分以下になるという完踏ギリギリタイム

(関門の30分~1時間前設定)

 

この先の湯本温泉エイド、静ヶ浦キャンプ場エイドは、それぞれ一旦本道から外れて10k,12kの折り返しコースとなる

静ヶ浦はボロボロ歩きでもいいから、この先の湯本温泉までの折り返しだけは走り切ろう

そう決めた自分ルールのおかげで145k湯本温泉はデッドラインの10分前に滑りこめた

 

そして去年の140kを超えた

無理をして滑り込んだからかなりキツイ

キツくてもどこか嬉しいんだよな  

 

だってさ 自分史上最長距離に突入だよ!

 

 

 

【仲間のリタイヤ】

 

折り返して反対車線にイオマーレの山下さんが現れた

山下さんとは32kのエイドからずっと約100kを一緒に走ってきた

時間にして20時間近く   時に前に、時に後ろに、、、

お互いの位置を感じながら共走してきた

初めての出会いだったけど、さすがに100kともなると今回の萩往還の戦友だ

 

その山下さんが145kでリタイヤ

 

一緒にゴールしたかった

 

山下さんの分も!

 

そう言えない状況だった 

10k先は自分もどうなってるか分からないくらいの落ちっぷりだった

 

でもあそこは嘘でもそう言うべきだったんだ

 

挑戦と言うのは出来るかどうか分からない事を絶対にやれると嘘をつくところから始まる

 

なんで嘘でも言えなかったんだ、 あまりにも弱かった

 

戦友のリタイヤに涙が止まらなかった

 

 

 

2度目の夜がやってきた】

 

走っては歩きが、歩いては止まりに変わって

そのうち暗くなり始めて2度目の夜がやってきた

 

暗くなって18 

スタートしてから24時間が経過していた

 

2日目の夜に突入する時間帯が一番ツライだろう

予想も覚悟もしてたのに、、、

 

メッチャ孤独感、疲労感

 

気持ち折れてんじゃねーよ!

 

 

やっぱり仲間というやつは勇気をくれる

 

140kのスタートを迎えたHiroshi、梅ちゃんが走り出していた

そうだみんなで完踏しようと決めたんだ

こっちも頑張らなくちゃ

 

152k仙崎エイドではマミのサプライズもあった

頑張ろう、、、

 

仙崎を出てすぐに玲貴さんとのすれ違い

 

「絶対いけるよ!」

 

思えば全部この人のせいだ いや、おかげだ

なんなんだこの背中を押される感じは

折り返しの静ヶ浦まで走ることが出来た

 

 

158k静ヶ浦では足が痛すぎて仮眠すら出来ないレベル

 

 

そもそも寝る時間なんてないから少し休んでまた走る

 

折り返してまた仙崎に戻ってきた


人だかり、、、 

 

なんだこれ?

 

みんなこの折り返しが出来ないと判断してここでリタイヤ宣言

どうりで折り返しの復路はほとんど人がいないはずだ

 

つまりボクは、ほぼ最後尾ということか、、、

 

 

 

【最大の難所 宗頭エイドまでの道のり】

 

次のエイドは176k宗頭エイド

12k先でかなり距離がある

0時までに辿り着かなくてはならない 

 

1kごとにシューズを脱いで足裏のマッサージ

こんな痛みは生まれて初めてだった

筋とか筋肉とかじゃなくて肉が痛い そんな感じ

 

腰から太ももにかけて痺れてきた

股擦れが最高潮に痛い

ワセリンも効かない擦り傷の状態になってしまった

 

走っている真っ暗闇の田んぼはカエルの大合唱

間違いなくここが一番キツイ区間だった

 

GoogleMapで残りの距離を何度も確認する

さっきから数百メートルしか進んでないを繰り返す

 

玲貴さんからは宗頭エイドで心折れてリタイヤする人が多いから絶対に長居するなと言われていた

 

無理です

 

宗頭で大きく休憩するすることしか考えれなかった

眠気もピークだった

 

ボロボロの状態で宗頭に着いたのは約束の0時を超えた頃だった

 

熱湯で足裏を温めた、着替えて、飯食って

 

2時には出なきゃ でもそれまで寝よう 40分寝た

 

 

ここで寝ている人の多くは休憩で寝ているのではなく

先にリタイヤしてここまで運ばれてきた人たち

 

やっと避難小屋に救助されたのにまた外の嵐へと旅立つ

 

そんな感じの重い足取りでエイドを出る

 

 

 

 

【暗黙のパーティー】

 

なんかポジティブな事はないのか?

そうだ内臓はやられてない 

えーとあとは、、、  

 

それだけか、、、、

 

180kの藤井商店を過ぎてからの峠の登りは全部歩いた

もう足残ってないよ

 

峠とは言え、次の三見駅エイドまでの9kの道のり3時間もかかることになる

 

ただでさえ限界なのに、、、

 

気がつけば前後誰もいなく、なぜか高速道路の入り口

ボクはここで道をロストしたことに気がつく 

 

疲れが倍増 ショック過ぎる

 

 

周りの少数のランナーももう限界

 

初めて見た光景だった

既に1人では走れなくなってるランナーが6,7人で暗黙のパーティーを組んで進む

誰かが走れば合わせて走り、歩けばみんな歩く、そしてまたみんなで走り出す

 

そうやって少しずつでもみんなで励まし合って進む

 

それでも12人とついていけなくなる

さっきまで隣にいた人がふと後ろを見るとはるか後方へと脱落していた

 

1人になった瞬間に走れなくなってしまうのだ

 

ライトがかすかにしか見えなくなるほど遠ざかっていく

 

 

 

【それはボクの番となった】

 

だんだんと小さくなるパーティー

 

そしてついに、、、

それはボクの番となった

 

189k三見駅エイドに着いて休憩

みんなが重い腰を上げてまた走り出す時

ボクだけがベンチで動けなかった

 

ベンチで横になって30

遅れたランナーもみんな行ってしまい誰も来なくなった

 

途中のボクの順位は297

最終的にこの萩往還250kの完踏者は295人だったので、この時ボクはホントに最後尾になっていたようだ

 

エイドのおじさんが着ていたフリースをボクにかけて

 

「よく頑張ったね」

 

 

終わった。。。

 

エイドでひとりぼっちの寂しいリタイヤか、、、

 

力の無いヤツは死に方すら選べない

 

そんなことを誰かが言ってたな

 

 

宗頭の関門が4

13k先のここは関門じゃないにせよ今5時半

 

デッドラインを2時間近く超えていた

 

みんなにどう説明しようか

こんな時間じゃ誰も起きてないか

 

寝ないでタイムキーパーやってくれてるナオさんとサトユカにはラインしなきゃ

この時間でここにいるなら状況は言わなくても分かるか、、、

 

申し訳ないな

これじゃ人にウルトラだの挑戦だの言う資格はないな

そんな事を考えてたらまた泣けてきた

 

 

 

【再び、行けるところまで行こう】

 

Hiroshiは調子いいみたい

梅ちゃんは明木エイドまで来たみたい

やっとLINEを見て確認できた

 

ここの次は10k先の玉江駅エイドで140kランナーの本線との合流となる

今まで頭が真っ白だったのにリタイヤがよぎった瞬間から妙に頭が冴える

 

萩市内に入ったらバスでリタイヤ回収場所まで移動することになる

ここでリタイヤしたらバスないんだよな、、、

 

リタイヤするなら萩市内の次のエイドまで行った方が

 

今ならHiroshiには間に合わないけど梅ちゃんの前には出られる

 

萩まで行こう

そして せめて梅ちゃんと会おう

 

よく考えたらここから見下ろす浜崎緑地公園は海岸線

ってことはこの先10kは下り基調のはず

 

ゴールまであと60kではなく あと10kなら

 

「行けるところまで行こう」

 

また大嫌いな言葉を口にした

 

元気に走り出すことが出来た

いやいや、、、そんなうまい話はないね

 

変わらずボロボロだった

 

 

それでもなんとか140kとの本線に合流して夜が明けた

3日目の朝日 ついに200kを超えた時にまた泣けた

 

Aゼッケン!2日前から走ってるんですよねスゴイ」

「頑張って! 絶対ゴールしてください!」

 

で、でもボク今ね 最後尾なんだよ

 

140kのランナーと同じコースを走ることでたくさんの元気をもらった

 

ゼッケンを見た瞬間に道を譲る人までいる

 

Movieのチームの人ですよね?」

Movie見ました!」

 

かなりの人に言われた

 

「あのMovie見たせいで今ここ走ってます」

 

嬉し恥ずかし。。。

 

負けずにこちらもいろんな人に

ナイスラン!

頑張ってとりあえずみんなで虎ヶ崎まで行こう!

 

そして先に虎ヶ崎から折り返してきた玲貴さんとまたもやすれ違い

 

「絶対に間に合うよ!」

 

玲貴さんはサロマのワッカでも本当にゴールに間に合う人にしかこれを言わない

 

また力をもらえた

 

そうやってたくさんの力をもらいながら気がつけば207k虎ヶ崎エイド

 

 

 

【確信した!ゴール出来る】

 

残りフルマラソン 

250kランナーのここからの平均完踏タイムは9時間45

 

デッドラインからは30分遅れだけどかなり詰めれた

ここで予定の休憩時間をカットすればデッドラインに戻れる

 

完全に挽回できた!

あの最悪の状況から信じられん!

 

Hiroshi30分前にいる、梅ちゃんは50分後ろ

頭は冷静に戻れたし、位置状況も把握出来てる

キツイながらも足は動いてる

 

しばらく走って虎ヶ崎からの折り返しで若さん、中村さん、こまっちさんと会えた

 

が、ここで会えるのはかなり遅いのでは。。。

 

その中には梅ちゃんもいた

まずい時間帯にいる。。。 

頑張って追いついてくれ

 

216k金照苑

IG九州チームがサプライズで応援に来てくれてた

 

ありがとうパワーもらったよ

 

 

217k陶芸の森公園にたどり着いた時にボクは確信した

 

ゴールできる!

 

11時 偶然にも去年と同じ時間にこのエイドにいる

足が壊れ膝に水がたまってまともに進めなくなった場所


残りの35k6時間以上かかったけど制限時間45分前のゴールだった

今はボロボロでも去年より、あれよりマシだ 

 

だから絶対にゴール出来る

 

 

実際、ボクは去年歩きまくった場所を走れていた

 

 

 

【梅ちゃんが来ない】

 

227k明木エイド

もうシューズを履いているだけで足裏が痛い

 

ここからは萩往還道 いわゆる山岳コースとなる

250kでボロボロになったボクを140kの梅ちゃんが後ろから追いつく

これが予想していたストーリー

 

来ない、、、 

 

ボードに梅ちゃんへのメッセージを残して先を行く

 

ゴールを確信したボクの頭の中は、既に滑登走3人全員の完踏だけだった

 


 

10k先の佐々並エイドまでは長くツライ道のりとなった

股擦れがさらにひどくなった 暑さもピークの時間帯

 

とにかく長い!

いったいいつになったら佐々並エイドに着くんだよ!

 

ゴールを確信した陶芸の森公園からの20k4時間もかかっている事に気がついた

 

なんてことだ、去年と同じ時間に237k佐々並エイドに到着してしまった

 

走れていると思っていたこの区間、結局は去年のあの足と同じ時間かかっていた


怪我をした去年と同じスピードだったってことか、、、

45時間237kも走ってるんだから当たり前か

 

去年はここから挽回して走りまくって、なんとか制限時間内でのゴール

 

今回も走りまくらないとダメって事か  

 

イオマーレの角田さんもリタイヤしてここで待っていてくれた

あの角田さんまでもがリタイヤ なんて過酷なんだ

 

デッドラインの15時まで待ったが梅ちゃんは現れなかった

 

絶対に後ろから来ることを信じて先をいく

 

 

 

【最後の走り】

 

今年は250kなのに最低でも去年と同じペースで走らないとゴールに間に合わない

244kの夏木原エイドからは激坂なので登りも下りもさすがに走れない

 

なので夏木原までの緩く長い登り

この7kで勝負をつける

坂は得意だ トレイルに比べたらこんな坂なんて

 

走りまくった

 

集中力を切らさないために抜く人数を数えながら走った

12人、、、3031人、、、50人、60

ボクはこの7k64人を追い抜いた

なんだこのパワーは、、、 

 

自分でも信じられない

 

そして244k夏木原で力尽きた 

もう走れない

 

でもこれでいい

 

あとは元気な足でも走れない登り下りのコースが3k 

ここは歩けばいいさ

 

 

247k ついに萩往還道を超えた

 

 

 

 

【最低最悪、かつ最高のゴール】

 

Hiroshiがゴールした。

途中で激落ちしてたら会えるかもって思ったけど流石だ

 

あとは梅ちゃん

 

萩往還道の終わりで後ろを見てもトリコロールは、、、

梅ちゃんは現れなかった

 

ビクトリーロードと呼ばれる残り3k

何度も何度も後ろを振り返った

梅ちゃんとのゴールを期待したが現れない

 

 

最後の角を曲がれば栄光のゴール

多くのランナーや応援の人がハイタッチで迎えてくれる

 

萩往還のゴール直前のハイタッチは他のどの大会も真似できないほどの盛り上がりようだ

 

 

着替えを済ませていた若さん、中村さん、こまっちさんの姿を見てみんながリタイヤしたことを悟った

リタイヤしたイオマーレの角田さん、山下さんもゴールで待っていてくれた

 

みんなリタイヤか、、、

 

涙がぶわっと出た 

 

 

 ・・・

 

完踏したHiroshiの横に梅ちゃんがいた

 

 

 

-----なんでここに居んだよ!----

 

ボクのゴールの次は梅ちゃんのゴールのはずだったんだ

梅ちゃんをハイタッチで迎えるはずだったんだ

 

滑登走3人の完踏は夢と終わった

 

梅ちゃんはボロボロでもギリギリでもボクの後ろに食らいついてると信じてここまできた

 

何回後ろを振り向いたと思ってんだ

 

 

 

-----最低最悪だ-----

 

練習では何度もケツを叩いてくれた

お互いに切磋琢磨することが出来る仲間だ

何度、梅ちゃんに負けないようにと頑張って練習したことか

その存在はこの萩往還までの道のりで大きな存在だったんだ

 

なんでここに居んだよ、、、

 

 

 

 

でも本当は何となく気がついていた

 

明木エイドの通過タイムが現実的ではなかった事

梅ちゃんのラインが途中から止まっていた事

 

自分のリタイヤを走っている仲間には知らせるなという男気のあるヤツだという事

 

 

 

 

ボクは理不尽にも、、、

 

リタイヤになったけど 自分のゴールに梅ちゃんがいてくれて

 

 

 

最高に幸せだと思ったんだ

 

 

 

 

【あとがき】

 

萩往還は来年の30回大会でファイナルとなります

ボクは一時は250kの最後尾にもなり、たくさんの涙やリタイヤを見てきました

来年のファイナルでのリベンジにかけてる人もいますし、140kを完踏して最初で最後の250kに挑戦する人もたくさんいます

おそらく来年のエントリーは抽選か先着になるという状況は避けられないでしょう

1枠でも無駄に出来ない来年のためにボクはこの完踏をもって萩往還を終えたいと思います

来年の萩往還のすべての挑戦を心より応援しています

 

ありがとうございました。

 

滑登走@アマタツ